アメリカへ

すっかり遅くなりましたが、2023.2.23〜3.11(帰国したら12日)濃密な17日間でした。
最初の2週間はダラスに滞在して、Dallas College にて3回演奏や講義の機会をいただきました。

到着した翌々日、音楽鑑賞の授業を任されました。曲の解説をしながら演奏して欲しいとのことでした。いつもはどのような内容の授業なのかを尋ねると、そのクラスというのは、『生演奏』だけを聴くという授業なのだそうです。オーケストラ、オペラ、ジャズ、ブラス、室内楽を実際に聞きに出かけるとのこと。最初は、リサイタルで演奏する予定の曲の一部を弾いたらいいかな?と考えたりもしましたが、授業内容や目的を聞くと、もっと一般的な作品の方が良さそうな気がしたので急きょ、音楽史の流れに沿って名曲ばかりを演奏、紹介しました。突然のオファーだったのでもちろん楽譜の準備も無いし練習する時間も無かったので、自分のレパートリーになっているもので構成しました。
演奏もさることながら、それらの時代の特徴や作曲家や作品についてのお話を当たり前ですが全部英語で話す機会をいただいたことはとても貴重でした。内容自体はいつもレパートリーコンサートでやっていることですが、英語での説明はもっとしっかり出来るようにしておきたいものだと痛感させられました。
それでも、授業が終わると受講生たち一人一人がいろいろな感想を聞かせてくれてありがたかったです。クラスの中で一番興味無さそうに見えた男子学生さんが真っ先に両手で握手してきて感謝の言葉を伝えてくれたのには驚きました。またある女子学生さんは「ショパンで泣きそうでした」と
胸がいっぱいな様子が伝わってきました。
とりあえずお役目は果たせたようでホッとしました。

滞在6日目の夜にようやくレッスンしていただけることに。久しぶりのレッスンは自分の演奏に欠けているものや不足しているものに気付かせてもらえる貴重な時間でした。昔、定期的にレッスンを受けていた時にいつもそうだったように、音楽の持つエネルギーを感じ直すとでも言うか、作品の凄さが新たによみがえってくる感じでした。

レッスン後、今度は「明日の午後、ミニコンサートとレクチャーをしてくれ」とのこと。3クラス合同でその中には一般教養の音楽のクラスも含まれているとのこと。「生のピアノ演奏を聞く機会なんて彼らにとっては生まれて初めてで、なおかつこれが最初で最後かもしれないぞ」と言われ、「明日はショパンの誕生日だからショパンのために彼の作品を入れたら?」ということで、リサイタルで演奏する予定のバラード4番に有名なノクターン 作品9-2を加え、オープニングはモーツァルトのきらきら星変奏曲にしてみることに。

そして問題はレクチャーの方。どうやら4スタンスについて簡単なデモンストレーションをして欲しいとのこと。何分あるのかも分からず、自分が英語でどの程度流れ良く伝えられるのかも未知数なので、『重力』と『土踏まず』という英単語を申し訳程度に調べて、あとは様子を見ながら何とかしようと腹をくくりました。

そして翌日、教室いっぱいの学生さんたちの前でまずはミニコンサートを。音楽に関係ない学生さんたちにとって、オープニングがきらきら星変奏曲だったのは良かったみたいで、いただいた感想には『あんな風になっていくだなんて本当に驚き!信じられない‼︎」みたいに書かれているものが多かったです。そして、先生がおっしゃっていた通り、『生まれて初めてこんなに近くで生のピアノ演奏を聞いた!』というものもありました。

ショパンについてはその生涯については先生が少し語ってくれたこともあって、学生さんからは『自分の人生に思いを馳せながら聞きました』
という素敵な感想もいただきました。

4スタンスについては、私の英語が拙すぎて、どこまで何が伝わったのか本当に心配だったのですが、そのおもしろさは伝わっていたようでとりあえず胸をなでおろしました😅
自分的に、最初に任された音楽鑑賞の授業でも、このレクチャーでも、笑いをとることが出来たことが何よりもの嬉しいことでした😆(何に焦点をあてているのだろう、私…)

私の恩師を始めとして大学の教授陣の先生たちにとても良くしていただき、会食をしたり、ダラスシンフォニーを聴きに連れて行っていただいたり、自分だけのサラダを作ってもらえるお店に案内してもらったりと、思いがけず素敵なたくさんの思い出が出来ました!

ダラスでの2週間の滞在を終え、ソルトレイクシティに飛びShin Changyong氏のコンサートへ。
新しくなったプログラムは彼がさらなる学びを深めていることがとても良く伝わってくる内容でした。毎回思うけれど本当に凄い…。魂にズドンと響いてくる音楽は、私にまた新たな世界を見せてくれました。

今回の訪米は、今まで以上に濃密で充実したものとなりました。
この学びを今後の活動に活かしていきたいと思います。