理念


フィンランドの日の出

ピアノは本来、欧米人の大人、それも主に男性のために作られてきた楽器です。日本では、子どもたちの習い事、のように考えられている傾向が強いですが、決してそれだけのものではありません。

また、ピアノを弾く、ということは、想像以上に大変な作業であります。楽譜を読み、音の高さとリズムを理解し、正しい鍵盤を正しいアーティキュレーション(言葉で言えば、話し方)で打鍵し、さらにはその(楽譜に書かれた)音楽の意味合いを考えて表現していく。そしてそのすべてを自らの耳で注意深く聴き取り、次に続く音を選び取っていく・・・。という連続と言えるでしょう。

ですから、一口に"ピアノを習う"と言っても、学ぶことは多岐にわたっていくのです。楽譜の読み方(読譜)、指の動かし方はもちろんのこと、身体全体の使い方、耳のトレーニング・・・等と学ぶ必要のあることは本当にたくさんあります。

いつの日か、自分の弾きたい曲を自分自身の力で自由自在に演奏できるようになってほしい!それが自立であると考えます。 

そのために必要な基本となる土台をしっかり作り、その上で自分の心とつながる表現についてお伝えしていきます。

 

大切なこと


リス

一通り楽譜が読めるようになり、"ピアノを弾く"ということが出来るようになってくると人前で演奏する機会が増えてきます。どんなに習いたてのつたない演奏でも、あるいは、まだまだ発達段階にある演奏だとしても、その人の演奏を喜んでくれる方々はたくさんいらっしゃいます。

まず、家族。友人や親せき等々・・・。

完璧ではないから・・・と他の人に聞かせることを敬遠する方もいらっしゃいますが、私はそれはちょっと違うと思っています。人は、完璧な演奏だから心打たれるわけではないと思うのです。(もちろん、舌を巻くような完璧な演奏に心打たれる場合もありますが。)

大学時代の授業で教授が次のように問いかけたことが今でも私にとって目指す方向の指針となっています。 

『人はどんな動機(きっかけ)で演奏会に行こうと思うのだろうか?』

 

どうでしょうか?もちろんプロの有名な音楽家だから聞きに行こう!と思う場合もあるでしょう。しかし、ふだんの生活が音楽とあまり関係のない方たちにとってはどうでしょう?もし演奏会に足を運ぶきっかけになるとしたら、おそらくは、『自分の子供が演奏する』とか『近所の○○ちゃんが演奏会をする』とかそういうごくごく身近な人の演奏だから聞きたい、と思うのではないでしょうか。

そして、聞いてくれた方たちは、そういう身近な人たちの“生の"演奏をとてもとても喜んでくれるはずです。

逆の立場で考えたら容易に想像がつきますよね?目の前で誰かが自分のために演奏してくれたら・・・。こんなにうれしいことはないではありませんか!

間違うか、間違わないか。・・・演奏者はそればかりを気にしてしまいがちです。でも、聴き手はそんな風に思っては聴いていないのです。(もし、そんな風にしか聴くことが出来ないとしたら、心が寂しい状態の方なのでしょう。)

ですから、音楽の喜びを他の人たちと分かち合う経験をなるべくたくさんしてほしいと願っています。 その時に大切なのが、"心をこめて""心から"演奏することであると考えています。ただ指だけが達者に動いても、それは人の心に何も届けられません。

こういった観点からも"心"のあり方を重要視しています。

練習、本番、そして当然ながら日頃の生活全てにおいて、心のあり様はとても大切です。素直な心を持つ人は上達がはやいです。そして、本番で日頃の力を出すためには、強い心が必要です。ですから、自分の気持をコントロールするテクニックもレッスンの中での会話や呼吸法を通してお伝えしていきます。