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レッスンに想う

練習の習慣をどうやってつけるか?

ピアノを習いはじめるお子さんは多いけれど残念ながら思うように弾けるようになる前に離れていってしまう人も多いようです。たとえ小学生のうちは続けていたとしても、中学生になるタイミングでやめてしまうのは、ある意味’中学生になるタイミングを待っていた’というだけで、結局自分のものになっていなかったということだと思います。ピアノを弾く喜びは、段階ごとにいろいろあるといえばあるけれど、真の喜びを感じられるようになるのはだいぶ大きくなってからのように思います。

だからこそ、毎回のレッスンを上手く利用して、将来確実に自立出来るようになるために一歩ずつ確実に積み重ねて行ってくれたら、といつも思っています。

ピアノは本人が日々練習することでしか力はつきません。しかも、自主的に取り組んで、自分のペースが上手く作れた場合のみ、趣味だったとしても音楽と向き合うことがその人の大きな人生の柱になっていくのだと感じています。

指導者や親御さんが殊の外熱心に無理やり取り組ませ続けていると、一見同世代のお子さんよりはるかに弾けるように育つこともあります。しかし実のところ本当の力は付いているわけではなく、恐ろしいことに心の病を引き起こしたり、大きくなってから全くピアノを弾こうとしないどころか怨みすら持ったりするケースもあるようです。

どんなお子さんでも‘自分で分かる’、とか’自分で出来る’ようになると生き生きした表情になり自力で回り出します。
こうなったらしめたもの!この状態までいかに早い時期に持っていけるかが大切な鍵を握っていると思います。
そのためには習慣になるまではどうしてもご家庭でお家の方のサポートが必要です。「練習しなさい!」という声がけよりは、何か楽しいことを「一緒にやろう!」というような前向きな姿勢でいてくださるとありがたいです。

何かを学ぶ時、‘身につく’段階まで落とし込めるかが大きなポイントです。多くの人は、身につく前の、‘知っている’や‘分かる’という段階で先に進んでしまいます。これが落とし穴‼︎もちろん及び腰ながらも先に進むことは出来るでしょう。けれど、自信のなさや不安、よく分からないというような薄っすらとしたモヤが次第に蓄積されて、ついには嫌になってしまう…という残念なことになりやすいです。
曲が変わった時に前のことが積み重なっていないと感じたら、しっかりその力がつくまで同じ学習をさせてあげる方がかえって近道です。

なぜピアノ教育は前にばかり進む(次々に難しい曲に取り組ませる)ことを良しとしているのか私は不思議でなりません。音楽こそ、どの段階でも味わえる楽しめる作品が弾ききれないほどあるというのに…。
結果、ちっとも音楽を、ピアノを楽しめないお子さんばかりが育ってしまうのに。あるいは、ピアノを競争の道具ととらえてしまい、音楽がもたらすであろう心との対話が置き去りにされることになるのに。後者の場合、やる気と競争心は強いのでピアノの道に進んでいくケースは多いでしょう。でも、そんな風に弾かれたピアノが一体何をもたらすというのでしょう…?

たくさんの生徒さんを見てきて分かることがあるからアドバイスするのです。初期に大切なこと、少し軌道に乗ってきた頃に大事なこと、良い感じで力がついてきている時に大切なことなど。
音楽との素敵な関係を結べるまで、どうか信じてついてきていただけたら、と思います